丸谷才一は「笹まくら」から出発しているが、もうひとつの出発は「彼方へ」。「彼方へ」、「たった一人の反乱」、最後の小説『持ち重りする薔薇の花』までの長い射程。「彼方へ」は、いわば熟れかけの果実。真の果実好きは熟れかけの果肉こそ賞味する。