父母の、友の、猫の、己の死を深く見つめる作者の眼差しが、今ここにあるかけがえのない生に向けられる時、すべての事物が記憶を語りはじめる――。小説家・川崎徹の充実一途を示してやまない、これは生きとし生けるものへの優しい“死者の書”なのである。