春の潮騒、夏山の葉擦れ、秋の夜雨、冬の枯木灘。 熊野が、言葉を発している。黄泉の国であり、再生の地である熊野が産んだ俳人・堀本裕樹の三〇二句の「言霊」は、土くれから水平線の果てまでのすべての理が詰まった「曼陀羅」である。零れ落ちる宝石のように輪舞する、魂の故郷「熊野」。その愛しさと悲しさが、扉を開く者を包み込む。