これは、わが国の生んだすぐれた一出版人の自叙伝、あるいは回顧録といったものでは断じてない。 わが「生」に触れての峻烈な思いを、書きつづったものではあるが、それはこの国と民族にあって、真に愛すべきものと、そうでないものとを見抜くと同時に、時代の不誠実を告発し、激動の時代をひたすら生きた「貧しき者たち」へ、かぎりない愛慕と尊敬の念を表した、いうなら良心の書とでもいうべきものである。 時代を誠実に生きた者によってのみ書き得ることのできた希望の書であり、祈りの一冊であろう。