日本の小説界の空気と風土が激変したこの15年、川村湊は一つところにじっと腰を据え、気温の変化を肌で感じ、日差しと翳りの推移に目を凝らし、何もかもを視野に収め、肩に力を入れない自然体で、平静に、平明に、寛大に、辛辣に、「いま何が起きているか」を証言し続けてきた。「持続とは力なり」という言葉を、これほど鮮やかに示している仕事もないと思う。