松原あけみさんの歌を読んでいると、ときどきすっと遠くが見えるような感覚を味わうことがある。目の前にあるものを見ているのだが、それを透かすようにして、遠くのものを見ている視線がある。そのような透明で遥かな眼差しが、読者の心のなかに静かに入ってくるのである。この歌集の大きな魅力は、まさにそこにあるのではないか。