本書はいくつか決定的に新しい知見を含んでいる。一つは欧米とイスラーム世界の共生は不可能だという思い切った断定である。内藤先生はこう述べる。“西欧とイスラームとの関係について、私は、もはや両者の関係は「水と油」、どこまでいっても交わることのないものであるという現実を直視した上でないと衝突を抑止できないと考えている。どちらかが相手をねじ伏せることも、啓蒙することもできない。” 西欧とイスラーム圏の間は“戦争”状態にあり、最優先課題は“停戦”だということである。そして、“講和”を実現するために国際政治的・法技術的に何がなされるべきかを本書は具体的に示す