我々の生の世界は物質(物)と媒質(音を伝える空気や光を通す空間)で埋め尽くされている。その中に人工物として大きく存在するものが建築である。その物質は自然や他の人工物、例えば街や集落という物質と調和して溶け込んだ雰囲気を自然に醸し出さなければならない。スイスの地で建築をはじめたツムトアは、自然に溶け込んだ山の稜線をむやみに崩さずに来た母国の必然の歴史に沿ってデザインをするなかで、こうした思考を強めていったのではないか。周りとは関係ない孤立した建物の分子が集まってできた街をみたくない。