マックス・ウェーバーを人間的にも学問的にも知っていると信じている人でも、この本には驚かされ、感動させられ、最後には圧倒されるだろう。これは彼の妻によってのみ、しかもこのような妻によってのみしか書かれ得ぬものだった。なぜなら、この人間の生活を完全に理解するためには、その生活の人間的に最も内奥のものを知悉するのみならず、その精神的内容と価値についての十全な理解を持たねばならなかったからである。マリアンネ・ウェーバーの名は現代の精神的政治的運動のなかで鳴り響いている。彼女が自分の良人の学問的業績を述べた諸章は、資質を同じくするもの同志の理解を示しているが、良人との多年にわたる思想交流の結果なのである……。それゆえこの本は、さまざまの深淵を覗かせるにもかかわらず、その時代の学術文化の進展のうちに組込まれ、それによって限定されている一人の偉大な学者の伝説というよりはるかに以上のものなのだ。ここでその相貌をあらわされているものは、人間的な、その高低を問わず現代のすべての圏に触れて来た生活の最大の調和なのだ。