第一歌集『マトリョーシカ』から四年――『サフランと釣鐘』のサフランは儚くなってしまった生身の母を、そして釣鐘は「道成寺」を見て作った一首から、肉体よりも情念や精神を孵す「怖ろしい胎」であるいわば創造の母をイメージしています。それは「短歌」そのものにも重なり、私にとってこの四年はふたつの母の狭間で引き裂かれた時間であったとも思えるからです。(あとがきより)