短歌の書式をはじめから心得てゐるところと、それを大胆に破つてゐるところがある。ナアバスな感じのない作風だ。原初から堂々としてゐる。短歌を自分の中の負の意識と繋げて作り出してはゐない。自負のある青年の風貌である。さうは言っても、歌は、もともと負の感情の容れものだから、どこか心と表現との間に矛盾がある。この一見硬質の歌の印象の奥に、中沢さんの軟らかい部分があるのだらう。