花石蕗の虻を放ちていよよ黄に 「いい風が来る夏痩の雀も来」「赤き実の十一月を惜みけり」などと共に、集中、私がもっとも心ひかれる世界である。身辺にある四季、身近な自然を愛し、その自然に育まれている幸せを噛みしめているかのような安らかさが見えるのである。 句集『秋袷』は心うるおう魅力に充ちている。それは、この作者がよく見せる静かな微笑のような味わいと言えようか。