このサイトについて

帯文データベース

推薦者: 小室等

 某年夏、佐渡島の野外ステージ。ぼくはボスニア・ヘルツェゴビナの歌姫ヤド・ランカさんと二人並んでフーンフールトゥーのリハーサルを聴いていた。アジア中央部トゥヴァ共和国の、喉歌と皮を張った擦弦楽器を操るフーンフールトゥー達の長閑な民族音楽の演奏が、ゆっくりと青空に溶け込む。「心の中の悪魔がいま私の口から出ていったわ」とヤドさんがぼくの方を向いて笑顔を見せた。世界は平和に満ちていた。 そこで徹さんだ。徹さんはこれを実現実行しようと生きてきたんだな。音楽の中でしか顕れない平和。フーンフールトゥーもヤドさんも時々ぼくだって、音楽の中で世界を平和にする。けれど、各々の日常は右往左往のはず。ところが徹さんは違う。我々が音楽の中でしか顕せていない日常の平和を顕在させようと、写真を撮ったり豚にからかわれたりしながら奮闘してこられた。お察し通り、そんな徹さんだもの俗世間と折り合いが付くわけがない。つかない折り合いをどうつけてこられたのか、ぜひ知りたい。だって、杉田徹という生き方には、世界を平和にするヒントが相当量埋蔵されているはずだから。

ISBN: 9784888665162
帯文種別: (未設定)
ID:6038
← 同じ推薦者の前の帯文  |  同じ推薦者の次の帯文 →