心かき乱された。表面にあらわれる抽象的で複雑な表情は、不思議なほど美しい。桃山時代の志野や伊賀を初めて見たときの衝撃以来、少しでも近づきたくて作陶を始めた。この本を見ていると、その頃の気持ちを思い出した。人智や技術を尽くしても、最後は炎にお任せするしかない。桃山陶はいまだ魔女のように遠くから幻惑されるばかりだが、写真では一瞬だけ近寄ってくれた気にさせられた。