閉じられた扇が初めて開かれたとき、その中に籠められた世界が見えてくる。 そこには、扇の使い手と作り手との気迫があり、過去、現在、そして未来永劫生き続けるその魂に、私は恐怖さえ覚える。能の扇の世界には、意匠の美を裏打ちする精神があるからだ。 本書に展開される扇の世界には、凝縮された日本の伝統的なデザインが生きている。