リリーさんは両親のことをていねいにていねいに書いていく。余分がないのだ。雑な奴は着ぶくれさせる。リリーさんは骨を拾うように書く。これは上京、これは食事、これは病院、これは死。淡々とした進行(コード)の中で、オカン、オカンというリズム(生命)を持った言葉が踊っている。オカン、オカン、ボク、オトン、オカン。オトンが入ると調子がくるう。でもそれすら大切で、最後には、“家族”としか言いようのない姿がうたいあがっている。