拝呈。過刻は失礼。「道化の華」早速一読、甚だおもしろく存じ候。無論及第点をつけ申し候。「なにひとつ真実を言わぬ。けれども、しばらく聞いているうちには思わぬ拾いものをすることがある。彼等の気取った言葉のなかに、ときどきびっくりするほど素直なひびきの感ぜられることがある。」という篇中のキイノートをなす一節がそのままうつし以てこの一篇の評語とすることが出来ると思います。ほのかにあわれなる真実の蛍光を発するを喜びます。恐らく真実というものはこういう風にしか語れないものでしょうからね。病床の作者の自愛を祈るあまり、慵斎主人、特に一書を呈す。何とぞおとりつぎ下さい。 (五月三十一日夜、否、六月一日朝。午前二時頃なるべし。)