伊勢の歌人喜多さかえの第四歌集。伊勢の歌はもとより、多くの歌枕の旅も伊勢人の眼から詠まれているところに特色がある。「跋にかえて」一首〈父を継ぎ守り育てし「やどりぎ」の六十周年の節目迎へぬ〉が万般の言を費やすよりも、この歌集にはふさわしい。