映画「SAW」シリーズに魅了されたひとなら、浦賀和宏の小説に同種の面白さを見出すだろう。放置された謎に見えたものも、別の作品で説明が施され、あちこち空白だらけの世界は、シリーズが進行するにつれて情報で埋められてゆく。だが、描かれる世界の酷薄さ、得体の知れなさが、それによって薄れるわけではない。浦賀が描き続けるのは常に、世界と個との鬩ぎ合い、そして世界のありようへの懐疑なのだから。