若さは一つの困惑なのだ 庄司薫氏の「赤頭巾ちゃん気をつけて」は、才能にあふれた作品で、深沢七郎氏の名作「東京のプリンスたち」を思わせる。過剰な言葉がおのづから少年期の肉体的過剰を暗示し、自意識がおのづからペーソスとユーモアを呼び、一見濫費の如く見える才能が、実はきはめて冷静計画的に駆使しれているのがわかる。「若さは一つの困惑なのだ」といふことを全身で訴へている点で、少しもムダのない小説をいふべきだらう。