「東京のプリンスたち」は何といふ心情の美しさに充ちた作品だらう。刻刻に移りゆき、刻々に変幻する十代の少年男女の心理は、ここではそのまま音楽に化身してゐる。これは現代そのもののフーガだ。今まで誰もが求めながら、誰もが実現しなかった真の「若さ」の純粋な表現がここにある。 深沢氏が沢山の流行語をまじへながら、しかも完全に現実を遮断した文体を作ったことに敬意を表するが、同時に、この作品の最後で、重い眠りの姿で登場人物の肩にのしかかりながら「現実」が姿を現はすおそろしい効果はすばらしい。